豊かにしている

これまでずっと、自らの欲望を省みることなく、ただ便利だからと、モノを手に入れることばかりを目指してきた。お金を稼いでモノを買えば便利に、豊かになることしか考えてこなかった。何が必要なのか、本当に必要なのか、それは本当に自分を豊かにしているのか。一切の思考を凍結してきた。その挙げ句、増え続けるものに取り囲まれ、ますます家は狭くなり、もっと広い家を求めてさらにお金が必要だと思い、あくせくと働き競争し、時間がないからとさらに便利なものが欲しくなり、そしてまたモノが増え...欲望のスパイラルはどこまでも拡大し増殖し、とどまるところを知らない。
 しかし、その欲望のメガネをいったん外してしまうと、そこにはまさかのまったく違う光景が広がっていたのであった。
 イケていない巨大なプラスチック製品の群れを高いお金を払って買い、さらにその家賃までせっせと負担している自分がそこにいたのである。

(寂しい生活、稲垣 えみ子)