いろいろな学問

人間は、どんな人だって、ひとりの人間として経験することにかぎりがある。しかし、人間はことばというものをもっている。だから、自分の経験を人につたえることもできるし、人の経験を聞いて知ることもできる。そのうえに、文字というものを発明したから、書物を通じて、おたがいの経験をつたえあうこともできる。そこで、いろいろな人の、いろいろなばあいの経験をくらべあらわすようになり、それを各方面からまとめあげていくようになった。こうして、できるだけ広い経験を、それぞれの方面から、まちがいのないようにまとめあげていったものが、学問というものなんだ。だから、いろいろな学問は、人類のいままでの経験を、ひとまとめにしたものといっていい。

(君たちはどう生きるか、吉野源三郎)