消費

むろん、だれだって食べたり着たりせずに生きちゃあいられないんだから、まるきり消費しないで生産ばかりしているなんて人はない。また、元来物を生産するというのは、結局それを有用に消費するためなんだから、消費するのが悪いなどということはない。しかし、自分が消費するものよりも、もっと多くのものを生産して世の中に送り出している人と、なにも生産しないで、ただ消費ばかりしている人間と、どっちがりっぱな人間か、どっちが大切な人間か、-それは問題にならないじゃあないか。生み出してくれる人がなかったら、それを味わったり楽しんだりして消費することはできやしない。生み出す働きこそ、人間を人間らしくしてくれるのだ。これはなにも食物とか衣服とか、という品物ばかりのことではない。学問の世界だって、生み出していく人は、ただその結果を楽しんでいる人々より、はるかにりっぱな人なのだ。

(君たちはどう生きるか、吉野源三郎)