マテリアル

「自分は小説を書くために必要なマテリアルを持ち合わせていない」と思っている人も、あきらめる必要はありません。ちょっと視点を変更すれば、発想を切り換えれば、マテリアルはあなたのまわりにそれこそいくらでも転がっていることがわかるはずです。それはあなたの目にとまり、手に取られ、利用されるのを待っています。人の営みというのは、一見してどんなにつまらないものに見えようと、そういう興味深いものをあとからあとから自然に生み出していくものなのです。そこでいちばん大事なことは、繰り返すようですが、「健全な野心を失わない」ということです。それがキーポイントです。

(職業としての小説家、村上春樹)