世界

ひたすら旅人を見送るばかりの毎日を送る男性が哀れとは限らないと考え直した。道ばたですれ違ったときの、まるで別人のようだった男性を思い出したからだ。彼には彼の世界があり、人生がある。もしかするとそれは、絶えず忙しく飛び回るばかりの私たちなどより、よほど丁寧に紡がれた、しっとりと慎ましやかで、穏やかなものなのかも知れない。

(犬棒日記、乃南アサ)
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