やめる

いったん始めてしまえば、人間、面子もあるし、世間体もある。なかなか「やめる」と言い出せないのは理解できる。大きな初期投資をした以上、撤退しがたい。抱いた理想もある。自負もある。それを断念するのが非常につらいことは想像できる。
 その時その時で生きていかなければならないのも分かる。家族を養い、従業員を養い、食べていかなければならないという事情も分かる。自分がその立場に立った時、止むを得ない選択だというのも理解できる。
 だが、それでもなお、問わずにはいられない。

(錆びた太陽、恩田陸)