ゆるやかな時の経過

この世に生を受けた者は、いずれ必ず死を迎えます。自分の命がある限りは、先に死にゆく誰かを見送らねばならず、大切なひとの数だけその苦しいまでの喪失感を味わうことになります。そうだとすれば、死別の悲しみや悔いからは生涯、逃れられないようにも思われます。
 けれども、ゆるやかな時の経過とともに、悲しみは薄紙を剥がすように少しずつ削がれていき、やがて、懐かしさへと姿を変えてくれます。気が付けば、涙ではなく微笑みで思い出を語る日も巡ってきます。限りある命だからこそ、先に旅立ったひとに心配をかけないよう、毎日を丁寧に生きていこう、と思える日が訪れます。

(蓮花の契り 出世花、高田郁)