東京という所は、故郷とも家族とも、
つながっていた糸が切れてしまった人間が、
ビルの片隅や夜の街などで、
吹きだまりで踊る埃のように蠢いている場所だ。
頼りなく乾ききり、居所も定まらずに過ごすうち、
人間らしい感情さえも擦り切れていく。…
数え切れない群衆の中に紛れ込み、
そのまま誰からも忘れられていくことなど、
あの街ではいかにも簡単なことに違いない。
はからずも、そんな身の上になってしまう人もいるとは思う。
だが、自分から望んでそうなる人も、きっといる。
自分とつながっている糸を自ら断ち切って、浮遊することを望む。
そんな人も、漂う埃さえ飲み込んでしまうのが東京だ。
(ニサッタ、ニサッタ、乃南アサ)
街に埋もれて暮らすことも、
何か注目されて暮らすことも、
人生のひとコマに過ぎない。
自分に合った生き方、働き方で、
ささやかな幸せを感じて生きられたら、
十分じゃないだろうか。
誰かと比べることなど必要ない。