私たちは日々、さまざまな出来事に心を揺さぶられながら生きている。うれしいことがあれば気分は上向きになり、思い通りにいかないことがあれば落ち込む。しかし、そうした感情の浮き沈みに振り回され続けると、心の安らぎを保つことは難しい。
私は、心の安定とは何も感じなくなることではなく、物事をあるがままに受け止められる状態なのだと思う。周囲の状況が変わっても、自分の中心を失わずにいられる人は、現実を冷静に見つめることができる。その結果、同じ出来事であっても過度に悲観したり楽観したりせず、本質に目を向けられるのではないだろうか。
この考え方を象徴する言葉として、次の一節を引用する。
引用:
心こそ己の居場所。
そのうちに地獄に天国を、
天国に地獄をつくる。
John Milton(ジョン・ミルトン)、Paradise Lost(『失楽園』)1667年 初版
この言葉を引用したのは、人間の幸福や苦しみの多くが、環境そのものではなく、それをどのように受け止めるかという心の働きによって左右されることを端的に表しているからである。
実際、同じ状況に置かれても、希望を見いだす人もいれば絶望する人もいる。豊かな環境にいても不満ばかり抱える人がいる一方で、困難な状況の中でも感謝や喜びを見つけられる人もいる。その違いは、外側の条件だけでは説明できない。むしろ、心の持ち方が世界の見え方を大きく変えていると言えるだろう。
また、私たちは未来について不安を抱きがちである。けれども、確かめようのない遠い未来を過度に心配するよりも、まずは今の心の中に平安な場所を築くことの方が大切ではないだろうか。心が安定していれば、困難に直面しても冷静な判断ができ、人生をより前向きに歩むことができる。
心は放っておけば揺れ動く。しかし、自分自身と向き合い、物事を正しく受け止める力を育てていけば、心の中に小さな「天国」をつくることはできる。その積み重ねの先に、本当の幸福や安らぎが見えてくるのかもしれない。