幸運

入り口で入場券を渡して、会場の中に入れてもらって、それからどのような行動をとるか、そこで何を見出し、何を取り、何を捨てるか、そこで生じるであろういくつかの障害をどのように乗り越えていくか、それはあくまで個人の才能や資質や技量の問題になり、人としての器量の問題になり、世界観の問題になり、また時にはごくシンプルに身体力の問題になります。いずれにせよ、それはただ幸運であるというだけではまかないきれないものごとです。

(職業としての小説家、村上春樹)