幸せ

自分は、何かを手に入れるためでもなければ、何かを成し遂げるためでもなく、ただその場に止まりたくないという思いだけで、ここまで歩きつづけてきた。
 しかし、いま、自分は、遠ざかろうとしているこの場所に心を残している。春から春までのこの一年が、自分に心を残すべきささやかな場所を与えてくれていたのだ。...
 そういう場所があったということ。もしかしたら、人は、それを幸せと呼ぶのかもしれないな

(春に散る 下、沢木耕太郎)