何を書くか

何を書くか決めることは、何を書かないのかを決めることでもある。どんな小さな出来事でさえ真実は常に複雑で、複数の立場がそれぞれの言い分を主張する。全ての主張を併記することは公平なことではない。ほぼ間違いないと見られている定説と、一人二人が言い張る新説とに同じ紙幅を割くことを、公平とは言わない。どれが定説でどれが裏付けのない珍説なのかを見抜こうとする時、専門家の意見は大いに役に立つ。けれど最後の判断を下すのは、記者だ。その責任から逃れることはできない。

(王とサーカス、米澤穂信)