この目で見なければ…

この目で見なければ
その世界は
存在しないのと同じことだし、

その世界を
自分の言葉にできなければ
獲得したことにならない。

(あしたはドロミテを歩こう、角田光代)

もちろん、
自分の言葉に
出来ようが出来まいが、

その世界が存在する事実に、
代わりはない。

ただ、自分で何かしら
獲得するものがないと、
新しい世界でも何でも、
その世界と自分のつながりは、
きっと薄まっていくと思うんです。

世界とのつながりは、
自分という人間を、ちょっとずつですが、
レベルアップさせていくことでしょう。

いいことばかりではありません。
出来ると思っていたことが
出来なかったり、
今まで感じることのなかった感情に
揺さぶられたり、
どうすればいいか、何を目指せばいいのか、
見えなくなって、葛藤も多いことでしょう。

最初は、
「とんでもない世界だ」
という言葉しか出てこないかもしれない。

それが、
「うーん、なかなか深い世界だ」
となり、

「ここらへんからなら、
 けっこう入り込めるかもしれない」
みたいな理解が出来上がっていく。

そうやって、自分とかかわりの
もてる世界の切り口が見えてくると、
人は、大きく前進すると思います。

正確にいえば、
前進する覚悟ができる、
っていうところでしょうね。

人は、やっぱり、
分からないものには不安がるから、
言葉に出来るっていうのは、
その不安が少し減ったことなのでしょう。

(参考)あしたはドロミテを歩こう(角田光代)

No.3061


こころの処方箋(河合 隼雄)

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