持ってるとか持ってないとか、
持ち物検査じゃないんだから。
持ち物検査でもないし、
一等とビリを決めるかけっこを
してるわけでもないんだよ、私たち。
(薄闇シルエット、角田光代)
これまでのどの時代でも、
あれを持とう、これを持とう、
自分の持っているものを
もっと増やそうと
がんばる人が多かったに違いない。
たとえば、昔で言えば、
マイホームは城、
マイカーは馬、
名刀は高機能パソコン、
名器はブランドもの、
などの存在じゃないかと
考えたりします。
立派なものは、自分の
ステータスになるアイテム。
持っていると誇りになる。
持っていないと憧れる。
そういうシンボルだったことでしょう。
ただ、人生は、
持ち物検査じゃない。
何を持っているか、
何を持てるようになれたか、
そんな持ち物検査は、
やりたい人がやればいい。
付き合いたいわけでもないなら、
そこからは距離を置けばいいのだ。
どんなふうに生きたか、
どんなふうに生きようとがんばったか、
それを忘れていないほうが大切。
もちろん、
そんなこと考えるのも
面倒くさくて、
がむしゃらに生きている、
っていうのも、
持ち物検査よりはマシな気がする。
持ち物検査の一等賞は、
人生の一等賞じゃない。
(参考)薄闇シルエット(角田光代)
No.4332