もしかすると、歳をとるのは…

もしかすると、歳をとるのは
楽しいことなのかもしれない。
歳をとればとるほど、
思い出は増えるのだから。

そしていつか
その持ち主があとかたもなく
消えてしまっても、
思い出は空気の中を漂い、
雨に溶け、土に染みこんで、
生き続けるとしたら…
いろんなところを漂いながら、
また別のだれかの心に、
ちょっとしのびこんで
みるかもしれない。
時々、初めての場所なのに、
なぜか来たことがあると
感じたりするのは、
遠い昔のだれかの思い出の
いたずらなのだ。

(夏の庭、湯本香樹実)

「あ゛ーーーー」

起きてきたばかりの高3次女が、
いきなり、叫んだ今朝。

何、何?

と飛んで行くと、
大きなクモが居間の天井から、
ぶらさがっていた。

田舎だから、
ありえない話でもないが、
どこからどう入ったもんだろう?

わが家で一番うるさい次女も、
あと8ヶ月もすれば、家を出て行く。

こんな大騒ぎの朝も、
思い出になると思えば、
「うるさい」が
「なつかしい」に変わる。

時間は戻ってこないからね。

(参考)夏の庭(湯本香樹実)

No.5962


こころの処方箋(河合 隼雄)

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