人って、何度も
違う人になるのかもね。
(抱く女、桐野夏生)
困った看護師がいるものです。
ご遺体の産毛を
処理してあげるために
自宅のカミソリを持ち出そうとするのです。
「おいおい、看護師のあなたが、
?なにも、そこまでする必要はないだろう」
と、夫は言います。
「職場に、カミソリを買ってくれるように言えば、
予算では買えないって言われるんだから」
「そりゃ、そうだろう」
「私の頭の中には、フェイス用シェーバーを
買ってやろうなんて案もあるんだから、
これくらい許しておいた方がいいよ」
「脅しだな、それって。まいった…」
これをするのを許さなければ、
もっと「ひどい」ことをしてやるぞ、
というのが脅しというものですが、
これをするのを許さなければ、
もっと「良い」ことをしてやるぞ、
(お金と時間、労力を使って)
なんて脅しもあるんですね。
まいった、まいった、看護師さん。
そのくらいの「良い」ことで勘弁してくださいな。