過去を気にしているのは、
過去がきみに
影響しているんじゃなくて、
きみのほうから理由があって、
それを握りしめている
としか言いようがない。
(伊藤守)
手は2本しかない。
左手で、雨風をしのぐ傘を
もっているとすれば、
空いている手は、一つだけ。
その手で、何を握るか。
過去をぎっちり握れば、
大切な人の手は握れない。
大切な人の手を握れば、
過去なんて握ってられない。
「今さら、忘れられない」
くらいに、いい思い出ならいい。
でも、そうでないなら、
ポケットにでもしまった方が…
心に焼きつくって、
本当にあると思うから、
意識して、過去を離していかないと、
忘れたいものでさえ、
なかなか忘れられないと思う。
硬直した手の指を、
1つずつ1つずつ開いて、
過去が逃げていくように、
ちゃんと忘れられるように。
決して、握りなおすことなど、
ありませんように。