人生は要約できねえんだよ。
人ってのは毎日毎日、
必死に生きてるわけだ。
つまらない仕事をしたり、
誰かと言い合いしたり。
そういう取るに足りない出来事の積み重ねで、
生活が、人生が、出来上がってる。だろ。
ただな、もし
そいつの一生を要約するとしたら、
そういった日々の
変わらない日常は省かれる。
結婚だとか離婚だとか、
出産だとか転職だとか、
そういったトピックは残るにしても、
日々の生活は削られる。
地味で、くだらないからだ。でもって
「だれそれ氏はこれこれこういう人生を送った」
なんて要約される。
でもな、本当に
そいつにとって大事なのは、
要約して消えた日々の出来事だよ。
それこそが人生ってわけだ。
(モダンタイムス、伊坂幸太郎)
人生には、
いつも大きなイベントが
あるわけじゃない。
トイレ掃除がある、
頼んだ仕事が思い通りに出来てこない、
ちょっとしたことで怒られる、
隣の家の騒音に悩まされる、
化粧ののりが悪い、
ムダ毛が多くて困る、
別れてくれない相手、
車をぶつけて修理に出す、
嫌な人間関係に振り回される、
子供の失態に悩む日々、など。
要約したら、いや、
要約されたくもない、
ささいな日常が少なくない。
イベントが起こることを期待して、
そればかりを待っていても、
しょうがない。
日々を生きていることこそが、
人生そのもの。そこで、
人生は鍛えられている。
他人には省かれてしまうから、
自分には大切じゃないわけでない。
日々が、日常が、
一番大切なんです。
今日も、生きることに必要な、
ふつうのことを、まずがんばろう。
(参考)モダンタイムス(伊坂幸太郎)
No.3444
