人間、いちどこうだと
思い込んでしまったら、
なかなかその考えを
変えることができないからね。
そうなってしまうと、
これから目の前に、
いまの話と矛盾する何かが
現われたとき、それに
対応することができなくなる。
要するに、物事を正確に
見ることができなくなってしまう。
(向日葵の咲かない夏、道尾秀介)
思い込んでいることに、
矛盾することがあっても、
自分に都合がいいように
人は解釈していたりする。
それは、きっと、
自分の幸せを守るためだと思う。
その幸せが、
ささやかであれば、
これくらいのことだから
放っておいてほしいと願う。
その幸せが、
大きければ大きいほど、
しがみつきたい気持ちは、
なくならない。
事の大小は関係ない。
どこまでもどこまで、
思い込みたいのだ。
人の自己防衛反応として、
そういうのは、ある程度、
認めていいんじゃないか、
という気もする。
ほかの人に迷惑がなければ…
しかし、一度、
この人は自分のことを好きだ、
と勘違いし、それに基づいて
相手を支配しようとか、
束縛しようとか、
そんなことに発展する場合には、
やっぱり危うい。
まわりから、
いくら言われても、
思い直せない人もいるのを
知っている。
そこまでいかなくても、
人は多かれ少なかれ、
一度思ったことから離れられない。
自分に都合がよければ、なおさらだ。
真実を見るために、
自分のなかにこそ、
一番の邪魔者がいる。
(参考)向日葵の咲かない夏(道尾秀介)
No.3880