本当の病気を知らない人間って
なんだかんだ言うだろう?
仕事が大事だとか未来だ夢だ責任だとか。
だけどさ、僕はここで
二十年以上働いているけど、
驚いたことに今まで
目の前の命より大事なものなんて
見たことがない。たった一度もだよ。
(僕らのご飯は明日で待ってる、瀬尾まいこ)
自分の命を守る、
大切な人の命を守る、
そういうことは、
病気や危険な目に遭わなければ、
ほとんど気にしなくていいこと。
けれど、いざ、
そういう瞬間が来た時には、
状況がガラリと変わる。
それだけが一番大切だ、
っていう場面に
置かれてしまう。
だから、
平和な時に、
命に何の心配もない時に、
命について
いくら語ったところで、
そこには、真実味があまりない。
それに、
自分から遠いところにある命は、
なかなか守れない。
すぐ近くにある命を
守ることさえ、かなり出来ない。
守ることが
難しいものほど、
大切なのだ。
失いかけているものほど、
いま大切にしないと、
後悔することになってしまうのだ。
そうなっていないものを語る
「大切論」は、たぶん大切じゃない。
No.5675